例えば合わせ鏡のような、ガラスが陽光を分けて色彩を帯びるような夢または現実。幾つもの鏡像、連続的なようで断続的な光の帯。世界に色がなければどんなに単純であろう。白と黒と灰色の世界。人によって世界の見え方が違う。客観的であろうとして却って不自然な科学。真理を求めて事実に目を向けない宗教。そもそも人間はタヌキだから自分の仕事がなくなることは避けるし、嘘でも有利な方を選ぶ。自分が本流だとうそぶけば他方を異端だと断罪し魔女狩りする。都合のいい方を選ぶ、寄らば大樹の陰。

夫々が自分の正統性を主張する。見え方が違うから欺こうとしているとも限らない。最小公倍数のような(時に玉虫色の)答えで充分だし、深追いしても袋小路に入るだけ。科学が万能なら我々の仕事はとっくになくなっているはず。機械にエサを貰うのは屈辱以外の何ものでもない。